泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
神藤タオル株式会社
代表取締役 神藤貴志
日本タオルの歴史と並走してきた老舗メーカーから、
新しい風を吹き込んでいきたい。
神藤タオル株式会社が創設されて112年が経ちます。日本タオル誕生から130年ですから、日本のタオルの歴史を並走してきたということになりますね。私が家業を継いだのは28歳。大学卒業の間際に、先代である祖父から誘いを受けて仕事に就くことを決めました。父が大手金融企業に務めていたということもあり、私は東京で生まれ、父の転勤にともない中高校時代はイギリス、高校の途中から大学までを東京で過ごしました。ですから、泉州の地を体感したのは22歳から。なにからなにまでカルチャーショックの連続でした。ただ、会社を支え続けてきた社員の人たちが、優しく見守り、しっかりとサポートしてくださったので、のびのびと自由な価値観と発想を養っていくことができました。これまでの神藤タオルを守り継いでくれる社員のみなさんと、これからの新しい神藤タオルを築いていくという自分の役割が明確であること。この恵まれた環境を与えていただいたことに、心から感謝しています。
神藤タオルでは三年前から、エンドユーザーと直接つながっていくためのファクトリーブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げ、個性的なセレクトショップをはじめ、カルチャー発信地であるカフェやブックストアなどで、オリジナル商品を展開しています。中でも、両面のガーゼにパイルを挟みこんだ「インナーパイルタオル」は、私が入社する以前に祖父の代で開発された商品。昔ながらのシャットル機を熟練の職人が手間暇をかけて織り上げていきます。なかなか一般の人たちに届くことがなかったのですが、SHINTO TOWELのブランディングによって、たくさんの人たちからご好評をいただき、いまでは生産が追いつかないほどのヒット商品となりました。祖父のパイオニア精神を引き継ぎ、世に送り出すことができたこと。それが、とてもうれしい。
SHINTO TOWELでは、「インナーパイルタオル」をはじめ、3重ガーゼの真ん中を半分にするという特殊ガーゼ織りによって仕上げた「2.5重ガーゼタオル」、泉州タオルの特長である後晒しに倍の手間をかけて、最大限に吸水性を高めた「YUKINE」などをラインナップしています。商品開発からマーケティング、プロモーションなど、少しずつ手探りで行ってきました。これも社員のみなさんが、自由にトライし、チャレンジする機会を生み出してくれたから。130年の時を経て、先人たちが培った技術、ノウハウ、信頼と実績は、本当に素晴らしい。そして、私たち若い経営者たちは、その恩恵のさらに先にある未来の泉州タオルを描き、導いていかなければならないと実感しています。そのために、新しい情報やネットワーク、アイデアを惜しみなく提供していきたいと考えています。