泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
阪南チーズ染晒協同組合
代表理事 甚野祐宏
常に可能性を追求し、
挑戦を続けていく組織でありたい。
「糸染め」は、織物や製品になる前の原綿=糸の状態で染色をします。私たちがおこなっている「チーズ染め」とは、ホビンにワインダーで糸を巻き付け、それを高温高圧ガマで染め上げる方法。ホビンに巻いた糸の形が固形チーズに似ていることからこのように呼ばれています。戦後の高度成長期に発明され、それまで手作業でなされていた染色の機械化がはじまり、大量生産が可能となりました。阪南チーズ染晒協同組合では、昭和39年の創立以来、約50年に渡ってチーズ染色を続けてきました。
泉州タオルの特徴である「後ざらし」は、織り上がったタオルに付着した不純物を徹底的に取り除き、原綿が本来持っている吸水性や風合いを最大限に活かす製法です。その際に、先染めした糸が色落ちしないようにスレン染めという技法を用いた糸を提供しています。スレン染めは、堅牢度が高く、洗濯や摩擦に強いという特徴がありますが、染料と染め上がった色が違うため、色合わせに熟練された職人の技術と経験が要求されます。泉州タオルを未来へとつないでいくために、日々の研究開発をはじめ、さらなる技術向上を目指していきたいと考えています。
私が家業に就いて約10年になりますが、20代の頃はアーティストを目指してヨーロッパで放浪の旅をしていました。その際に「触れた色」「感じた色」「描いた色」の数々は、私にとっての貴重な財産です。イメージした色を具現化させたり、微細な色彩表現で商品の印象を引き立てるなど、さまざまなニーズに即した提案をすることができる。私にとって色とは、なくてはならない存在であり、世界中を明るくする、とても重要なファクターであると捉えています。
阪南チーズ染晒協同組合は「可能性」を大切にしています。既存の枠に捕らわれず、チャレンジ精神に溢れた組織でありたい。そのために、お互いの技術やノウハウを信頼し合い、自由に意見やアイデアを持ち寄り、常に新しい取組みを実践していける環境を生み出してことが、私のミッション。時代は刻々と変化しています。高度情報化によるネットワーク社会、それにともなうライフスタイルの多様化など、人々が次代の価値観を求めています。染色技術の追及から商品開発、あるいは新たなマーケット開拓やビジネスモデルの構築など、さまざまなフィールドでの活動機会を模索し、挑戦を続けていきたいと思います。