泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
ダイワタオル協同組合
顧問 北川晃三
「化学」によるアプローチで、
泉州タオルを未来へとつなげていく。
泉州タオルの最大特徴である「後ざらし製法」。ダイワタオル協同組合では、泉州の地場メーカーが織り上げるタオルの「晒し」「染色加工」の工程を担っています。高い吸水力、清潔さ、優しい風合いで定評をいただいている泉州タオル。その品質へのこだわりはもとより、私たちは、その先にある「新たな価値創出」を目指し、さらなる技術革新を日々実践しています。天然成分を用いた抗菌加工、無機塩で加工を施した防炎タオル、銀をナノ粒子化させることによる抗ウイルス加工をはじめ、数々の高機能タオルを生み出してきました。
ダイワタオルが創立して68年。私が21歳で仕事に就いて45年になりますから、組合の約3分の2の時間をともに過ごしたことになります。右も左もわからないまま、この業界に飛び込んで苦労が耐えなかったのですが、数年が経った頃に「化学」への関心が高まってきました。タオル加工の精度を上げたり、ロスを少なくするためには、化学の知識が必要不可欠だと感じたんですね。そこから、独学で造詣を深めていきました。知れば知るほど化学はおもしろい。科学と違って、A+Bが必ずしもCにはならないのが化学です。理論はわかっていても、さまざまな条件下で答えが変わってしまう。それを追いかけ、検証し、形式知に置き換えていく。このような試行錯誤を繰り返した上で、はじめてノウハウとなります。簡単なことだと思っていても、なかなかもうまくいかない。逆に、不可能だと考えられていることも、突き詰めていくと実現可能になる。それこそが、化学の魅力だと言えます。
ダイワタオルの工場には36もの工程に約100名のスタッフが携わっています。どこかの工程で少しでも条件が変わると、思いどおりの品質には仕上がりません。一つひとつの工程をすべてのスタッフが理解し、知識を共有しておく必要があります。私の役割は、常に高い品質を保ち、斬新な提案をし続けるダイワタオルの価値を守り抜くこと。そして、次代を担う後継者を育て上げていくことです。それが、45年間お世話になったダイワタオルへの恩返しであると同時に、地場産業である泉州タオルの未来を切り拓いていく「力」につながっていくと考えています。