泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
美由喜タオル株式会社
代表取締役 北浦照彦
常にチャレンジを続けることで
日本の伝統文化を受け継いでいく。
美由喜タオルは、昭和41年に父親が創業しました。私は二代目にあたるのですが、後を継いだという実感はないですね。私は、小学生の頃から工場の手伝いをはじめ、中学3年生で「将来の夢はタオル業!」と決意するほど、タオルづくりに魅せられ、父の仕事に憧れていました。とにかく父はカッコイイと(笑)。そのような学生時代を過ごし、大学の卒業後には、迷うことなく入社。本格的に現場に入ってみて、あらためて実感したのは、父の持つ経験値と技術力の高さ、そして、品質へのこだわりでした。もともと研究肌の私にとっては、学ぶべきことが多く、また、試行錯誤によって、どんどん新しい製品を生み出していくことができる可能性に満ちた環境でもありました。創業以来のマインドを基に、常に初心を忘れずに今後も精進して行こうと考えています。
平成のはじめ頃から、市場経済に大きな変化が訪れ、タオル業界も転換期を迎えることになりました。人々のライフスタイルが多様化し、さらに海外から高付加価値の商品が流通するようになり、消費者が「より自分に相応しいタオル」を求めはじめた時代です。私たちは、化学繊維をはじめ、シルクや麻といった綿以外の素材を使ったタオル、当時では、あまり普及されていなかったオーガニックコトンや和紙のタオル、肌に優しく泡立ちのいい天然素材の浴用タオルなど、あらゆる新製品を開発してきました。約10年間にわたる、さまざまなチャレンジの成果が、美由喜タオルのオリジナリティにつながっていると思います。
泉州タオルが誕生して130年。近代工業製品として発展してきた泉州タオルですが、さらに歴史を振り返れば、泉州の地は江戸時代の中期頃まで、和泉山脈から湧き出る優れた軟水で晒すことによる「白度の高さ」が商都大阪をはじめ、北前船に乗って全国に知れわたるほどの木綿織物産地でした。そのような背景から、泉州タオルは、世界中のタオルと比べて独自の特徴を持つことになります。手ぬぐいや反物を基本にしたサイズ、日本の気候風土に合わせた、しなやかで柔らかな仕上げ、また、浴用タオルとして使うことを考慮した吸水性と速乾性を兼ね備えた「適度なボリュームなど。原点を辿っていくと、泉州タオルは、日本の文化に根付く伝統品といっても過言ではないでしょう。
伝統を受け継ぐこと、しかし、時代に風化されないこと。それらを両立させるために考案した、当社のオリジナルラインナップ「WHITE & NATURAL」。トレンドの無撚糸などを使わずに、泉州タオルの技法を突き詰め、製織の設計技術によって、軽くて、ふわっとした柔らかさを実現させました。さらに、後ざらしの工程において、安全性の高い過酸化水素のみで漂白をした「ホワイト」、酵素による精錬加工により、生成りの綿糸でありながら吸水性を発揮する「ナチュラル」。どちらも環境に配慮したタオルづくりへの新たな試みです。美由喜タオルのチャレンジ精神と、先人たちが築き上げてきた知恵と技術。それらを、しっかりと歴史につなぎ合わせて、10年後、100年後の泉州タオルにとって、私たちにできることは何かを問い続けていきたいと考えています。