泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
番久タオル合資会社
代表社員 番匠久勝
厳しい評価基準を設けて、
泉州タオルが誇る「吸水性」に
こだわり続ける。
15年ほど前に「タオル格付協議会」が発足されました。タオル業者数十社が中心となって「吸水性」「速乾性」「洗濯脱綿率」など、タオルの機能に対して五つ星による評価基準を設け、ラベル表示化するシステムを完成させたんです。発足当時から、私も参画しましたが、任意のタオル約250種類を百貨店などで購入し、公的機関である大阪府立産業技術総合研究所にデータベース化を委託しました。消費者の方々が店頭に並んでいるタオルを選ぶ際に、柄や風合い、柔らかさなどは判断できるけれど、機能性に優れているかどうかは、使ってみないとわからないですよね。泉州タオルの最大の特長は「後晒し製法」。織り上がった生地を最後の工程で晒すことにより、糸に付着した不純物をきれいさっぱり取り除き、綿本来が持っている機能を活かしきるという作り方です。その優位性を消費者の方々に知ってもらいたかった。
これを機に、番久タオルでは「匠タオル」という自社商品の開発に着手しました。タオル格付協議会の評価基準の中でも、ドライユースに特化し、吸水性をとことんまで追求していくという試みです。もちろん五つ星。水槽に浸けるとコンマ数秒で沈みます。最初は「自分たちが培ってきた技術を世間に証明したい」という想いではじめたので、正直、売れるとか、ビジネスになるかとかは考えていなかったですね。ただただ泉州タオルの底力を見せつけたかった。それが十数年経って、じわじわと理解されはじめ、時代の流れとともに、消費者の方々も「本当にいいタオル」を求めるようになってきました。いまでは、経済産業省が主宰する「日本が誇るべき優れた地方産品を選定し、世界に広げていくプロジェクト~wonder500」に選ばれたり、たくさんのお店で取り扱われ、注目を集めるようになり、泉州タオルを牽引する一助になれているんじゃないかなと思います。
創業110余年の家業を継いで30年。何が楽しかったかというと、ものづくりに没頭できたこと。いいものをつくるという情熱を失わずにやってこれました。これからも、いまの設備で、いまのメンバーでやれることを精一杯続けていきたい。先のことはわからないけど、泉州タオルの次代を担う後継者たちが「何かやってくれるんじゃないか」と期待しています。そのために、自分が身につけた経験や技術を存分に使いこなしてもらいたい。そして、私たち世代の情熱を引き継ぎ、泉州タオルの未来を切り拓いてほしいなと思います。