泉州タオルをつくる

「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。


ツバメタオル株式会社
代表取締役会長 重里豊彦

泉州タオル130年間の経験と技術力を生かしきって
「本当に価値のあるもの」を追求していきたい。

日本タオルは、手拭いが進化したものです。だから、一般的な日本タオルの寸法は手拭いと同じなんです。平織りからテリーモーションという工法の開発によって、ループパイルを施すことに成功したのが、今から130年前。糸がループ状に重なって織られるわけですから、手拭いと比べて糸面積が飛躍的に増え、水をたくさん吸うということになります。つまり、日本タオルがなぜ生まれたかというと「吸水するため」なんですね。さらに、泉州タオルは「後ざらし」という工程を加えて、綿糸の持つ吸水力を最大限に高めます。タオルの起源から機能性に至るまで、泉州タオルに携わる人たちは、ゆるぎのない自信と誇りをもって仕事をしています。

創業から100年続く家業を継いだのが30代の頃。大学卒業後は、しばらく商社務めをしていました。父親のポリシーなのか、自宅の近所にある工場を見せてもらうこともなかった。だから、タオルの知識も一切ないまま業界に入ってきました。結果的には、それが後の経営手法に大きく影響していると思います。泉州タオルは、先人たちから受け継いだ高い技術力によって支えられています。しかし、そのことで「いいものが売れてあたりまえ」と過信してしまうことも多かった。私は、その状況を少し俯瞰で眺めながら、泉州タオルを「もっと多くの人々に伝える方法はないだろうか」「積極的にマーケットインできる仕組みづくりができないだろうか」ということを模索し、提案を続けてきました。市場を読み、消費者ニーズをキャッチし、泉州タオルを後世につなげていくための戦略を構築することが、私自身の使命だと捉えています。

海外の有名ブランド品が席巻していた時代、中国産のタオルが押し寄せてきた時代、さまざまな時代を経てきましたが、ここ数年間で、泉州タオルにとっての好機が訪れていると実感しています。高度情報化によって、消費者が「本当に価値のあるもの」を、しっかりと見定め、生活をもっと豊かにしていきたいというニーズが高まってきた。中国などのアジア諸国が、いくら巨大な工場で大量生産をしても「いいタオル」をつくる人材とノウハウがありません。しかし、地場産業である泉州タオルは、卓越した技術と経験を培った約100社の事業者ネットワークです。それぞれにレベルの高いものづくりができる。世界的にみても、このような「場」はないでしょう。この優位性を存分に生かして、みんなで知恵を出し合い、お互いの技術を磨き合っていけば、時代が求める風に乗っていけると考えています。