泉州タオルをつくる
「泉州タオル 大阪タオル工業組合」の事業者をはじめ、泉州タオルづくりに携わる人々をシリーズで紹介します。
現場からの声を通じて、泉州タオルの歴史や技術、つくり手たちの想いやこだわりを伝えていきます。
金野タオル株式会社
取締役社長 金野泰之
さまざまな生活シーンにフィットした
「人に喜んでもらえるタオル」を提案していきたい。
日本でタオルが生まれて130年。先人たちが築き上げてきた歴史の重さは、なにものにも代えがたい、非常に意義のあることとして受け止めています。泉州タオルが培ってきた「後ざらし」は、生地の織り上げの後に晒しや染色を施す製法です。織り上げる前に色を染める先染め製法と違い、糸切れを防ぐための糊や原糸に付着した不純物などを、最後の工程で、きれいさっぱり落とすことによって、吸水性が高く、柔らかい風合いに仕上げます。世界中でも、ラグジュアリーゾーンのタオルは「後ざらし」がスタンダードです。この素晴らしい技術と経験を、しっかりと継続させていくという使命を、あらためて自覚する機会をいただいたと感じています。
金野タオルでは、十数年前から自社ブランドの開発に力を注いできました。厳選した綿素材にこだわった製品づくり、海外向けのラインナップ、デザイナーとのコラボレーションなど、さまざまなアプローチを続けています。日本におけるタオルは「贈答品」という特殊な位置づけにありました。タオルというものは、誰かに贈るもの、頂くものでした。しかし、長引くデフレによって贈答市場が縮小をはじめ、欧米のようにタオルを自分で選んで購入するという時代が訪れてきました。自分で選ぶとなると消費者のニーズは多様化してきます。吸水性や速乾性をはじめ、大きさ、厚さ、柔らかさなど、さまざまな生活シーンにフィットするタオルを提案していかなければなりません。つくり手からの一方通行ではなく「人に喜んでもらえるタオルづくり」を追求していくことがミッションだと考えています。
地場産業である泉州タオルは、産地全体が支え合うことで、さまざまな時代の変化を乗り越えてきました。130周年を迎える現在、高度情報化、グローバル化による新たな時代の波が到来しています。私自身を含め、若い世代のつくり手たちが、さらに大きな視野で知見を深め、経験を高めていくことが大切です。そして、10年、20年後へと繋げていくための「新しい泉州タオル」を一緒に生み出し、育んでいきたいと思います。